
子供に日本語を自習させるには?

ウチの息子はいわゆる「帰国子女」というやつです。
妻が中国人で、中国で出産し、中国で子育てし、子供が10歳の時に一緒に来日。中国に住んでいた頃は、基本的に中国語での会話。英語教室には通わせていましたが、日本語はもう諦めていました。
ほとんど日本語を話せない状態での来日ですので大変です。小学校では中国人の教師が市から派遣されることになり、週4時間の特別授業です。それだけでは不十分ですので、日本語教室を探しました。都内にはいくつかあるようですが、地元ではなかなか見つかりません。
駅前留学とか、アレは日本人が外国語を勉強するための教室であって、外国人の子供が日本語を習う感じではなかったです。なんとか見つけたのが「公文式」です。小学生の頃、弟が通っていたやつです。
公文式で日本語を勉強できる
すぐ近所に公文式の教室はあるのですが、日本語を教えられる教師が常駐しているのは隣町でした。隣町までクルマで30分。週二回の公文教室通いが始まりました。
公文では、来日している中国人の子供向け、また、来日している大人の中国人向けの日本語カリキュラムが用意されています。試験を受けてもらって、日本語のレベルを見極め、適したグレードのカリキュラムに割り当てられます。
ただし、教師が中国語を話せるとは限らないです。息子が通う教室では中国語話せる先生はいません。身振り手振りで意思疎通して、あとは用意されたプリントとCDあるいはICプレーヤーで会話音声を聴きながら学習していきます。
まぁ、その公文独自のプリントと音声再生デバイスが「良くできている」ので、教師が中国語を話せなくてもなんとかなってしまいます。
問題は、小学校の授業をどうするか?
週4時間の中国人教師による日本語授業、公文式での日本語の勉強(週2回)、これで息子の日本語の勉強の体制は整ったと思いました。
ただし、小学校の担任の先生から、
「通常の授業にはまだついていけないので、授業中に何か課題をやってもらおうと思います。算数の計算ドリルや日本語の単語の書き取り、それ以外に何かご希望ありますか?」
と尋ねられました。
通常の授業に参加できるように、日本語の学習を強化すべきだと感じました。
「何か日本語の自己学習用の教材を用意します。それをやらせてください」
と先生にお伝えしました。
教材を探す
ネットで教材を探しました。
とりあえず片っ端からさまざまな教材を買ってみました。しかし、「自己学習」で済ませられる「完璧な教材」は見つかりませんでした。
そこで方針を変えました。
教材が無ければ新しく作ればいい
小学校では一人の生徒のために、教師がマンツーマンで授業というわけにはいきません。当然のことです。帰国子女の小学生が自分一人だけで学習できる教材なんて、そんな「都合の良いシロモノ」なんてあるわけがありません。
無ければ作るしかありません。
手元にある教材で一番優れた自己学習用の教材は公文式でした。ただし、コレは週2回の授業で使う分だけなので足りません。同じ問題を繰り返しやらせるのでは子供が飽きてしまいます。
そこで、手元の教材の内容をコピーして、公文式のプリントのフォーマット(書式)に当てはめて、編集し直したら「新たな自己学習用の教材」ができる、と思いました。
DTPなら任せなさい
社会人になって入社した会社で最初に担当したのが製品のマニュアル作りです。ちょうどPagemaker全盛期で、これでDTPの基礎は学びました。
インターネットが始まる前のパソコン通信の時代でしたが、日常的に大量の文章を投稿していたので、パソコンで文章を入力編集することは慣れていました。
中国にいた頃も、日本人観光客向けの雑誌の編集などをやっていました。
紙として印刷されたものなら、同じようなモノを作るノウハウは十分でした。
で、オリジナルの自己学習用日本語教材プリントの元となる教科書が、今回ご紹介する本です。


この日本語学習教材の特徴
(1)学校行事、日常生活を例にして会話を学べるようになっている。
(2)イラストが多用されていて、わかりやすい。
(3)巻末に単語の英語・ポルトガル語・中国語の対訳表がある。
著作権の扱いが微妙なので、中身の写真撮影したものを貼り付けるのは控えます。
出版社のページのリンクを貼りますので、詳しい内容はそちらを参考にしてください。
DTPソフトで公文式フォーマットの日本語学習教材を作りました
公文教室通っているお子さんいらっしゃる親御さんならお分かりかと思いますが、1セット10ページ構成のテキストです。上記の教科書1冊につき100セットで、2冊分で200セットになります。
教科書をスキャンしてイラストだけ画像編集ソフトで切り出して、それをDTPソフトに貼り付けて、例文を入力して、中国語の説明文章を作成して貼り付けて、と大変でした。
教師が手取り足取り教えなくても、テキストを読んで自己学習するための教材ですから、中国語での説明(何をさせるのか、この文章や単語の意味など)が非常に重要になってきます。公文の教室で使われているテキストは、そのあたりしっかり作り込まれていますね。
完璧にというわけにはいきませんが、そのあたりの公文式のノウハウは利用させていただきました。やりかたのコツさえつかめれば、あとは機械的な作業で、教科書から公文式フォーマットに落とし込んでいくだけです。
この日本語学習教材の厳しい点
この2冊の教科書ですが、いくつか気になる点があります。
(1)教師が必要。子供だけでは「自己学習用教材」として使うのは無理。
問題自体が日本語だけで、生徒に対して何を要求しているのか、対応言語で記載されていません。対応言語を話せる指導者が存在して、初めて成り立つ教材かと思います。
(2)中国語は、中国本国(大陸)で使われている言葉と違うように感じます。
中国本国ではこういう言い方はしないなぁ、という単語が多く見かけられました。古い時代の言葉よりも、現在日常的に使われている子供たちが理解できる言葉で記載されるべきだと思います。
(3)英語版、ポルトガル語版、中国語版に「版」を分けるべき。
ブラジル人や欧米人のキャラクターが登場しますが、完璧には中国語の漢字には翻訳されていません。内容もすべて中国語に翻訳されてはおらず、公文式フォーマットに移植する際、不完全な翻訳を補足する必要がありました。3ヶ国語を無理に1冊にまとめるのではなく、それぞれ版を分ければ、こういう整合性のない状況は避けられたのではないかと思われます。
この日本語学習教材の便利な点
(1)イラストがわかりやすかったです。これが無かったら使うのは無理だったと思います。
(2)例文がたくさん用意されていたことも助かりました。足りない分を自分で考える、とかやりたくなかったですから。
日本語学習教材のその後
1年ぐらい息子にオリジナル教材をやらせていましたが、最後まではやりきれていません。公文式のほうが内容が高度になってきていて、日常生活ではかなり日本語を話せるようになってきていたので、この教材の役目は終わったのだと思います。
この教科書は指導者が必要で、子供だけで自己学習は無理なので、私は公文式テキストのフォーマットを丸パクリして、この教科書から例文とイラストをコピペしました。著作権法で許された「私的使用のための複製」を行使しています。
なので、作成した教材のデータは頼まれてもお譲りすることはできません。
この教科書に足りていないのは、問題文章の部分の翻訳です。生徒に何を要求しているのか、それが対応言語で書かれていないので、生徒は何をしなければならないのか理解できなくて先へ進めない。
指導者を用意できる、あるいは親御さんがフォローできるのであれば、有用な日本語学習用の教材になるかと思います。
子供用の日本語学習教材は、実質的にこれぐらいしか見つかりませんでしたので、帰国子女のお子さんがいらっしゃるご家庭では、この教科書を使わざるを得ないかも知れません。
この情報が参考になれば幸いです。